昼食
2日目のコンビ案件と解散したのは朝8時ごろだった。
意識が完全に切れて、盛大な寝落ちをしてしまい、集合時間に遅れてしまった。
この場を借りてもう一度謝罪します、ごめんなさい。
Lさん・kyoさん・プロと俺の四人で昼食を食べた。
発券機で俺のコインが何度も反応しないことを見て、プロは嬉々としてツイートをしていた。
混んでいたため2人組で別れることとなり、俺はプロと一緒にカウンターの席でごはんを食べた。
近況報告とかをお互いに話した。
去年、滞在させていただいた時も昼ご飯をよく一緒に食べていたなと少し懐かしい気持ちになった。
この人は年上だけど話しやすいなぁと思うときが多くある。
人がいいのにたまに暗いところを知っているからだろうか。
kyoさんは汗だくでカレーを食べていたような気がする。
美術館
Lさんが美術館に行き足りない目をしていたので、美術館に行った。
5月とは思えないくらい空は晴れていて、暑かった。
わけのわからないオブジェクトに、プロさんが嬉々として「なんだこれ!?」と言って無邪気にはしゃいでいてよかったと思う。
美術館内は人が多かった。
プロさんは足が速いので一人でとっとと進んでしまう。
それを呼び止めるためにLさんが「のんちゃま!」と声をかける。
あぁこの人たちらしいわ と慣れていたが、改めて感じた。
その後、チケットを購入して展示室へ行った。
映像作品がそのときの展示内容で、ほとんどが撮影することができなかった。
写真を撮りたがっていたLさんが「こんなの中学生の文化祭じゃん」とプンプンしていたのはとてもチャーミングだった。
プロさんは、展示物とあまり関係のなさそうなオーディオに興味津々だった。
美術に対して知識がないため、あまりに前衛的な展示物を見てもよく理解はできなかった。
器なのに穴空いてるの欠陥品だろ。
また、スタッフもすごく不愛想な対応で、みんな同じ謎のシャツを着ていたことに関して、kyoさんが「それも含めて"アートだから"。スタッフが不愛想なのも含めて前衛的アート」と相変わらずめちゃくちゃなことを言っていて面白かった。
その後
のんちゃまさんはもう帰宅するとのことで、残った3人で城に行くことにした。
あまりにも暑かったので、ベンチがあるところでkyoさんは仰向けになって寝っ転がっていた。
Lさんは明らかに嬉しそうな感じで城の写真を撮っていたので安心した。
その後、kyoさんも帰宅することになって、Lさんとkyoさんが握手して解散をしていた。
あぁそういえば、この人たちは会うのが久しぶりなのかと思った。
俺個人はみんなとちょくちょく会ってるけど、そうじゃない人もいるもんなとか。
俺とLさんは街のベンチに座って、俺のバスの時間まで話していた。
自分はすぐに帰れるのに、一緒に待ってくれるのがLさんらしいなと思った。
あんまりにもさりげなくこういう気遣いができる人だと思う、気を遣われた方がわからないくらいに。
好きだなあ、この人が、と思った。この才が。痛いくらいに。切ないほどに。
数十分くらいダラダラ喋っていても楽しかったのは、Lさんが俺に合わせてくれたからなのだろう。
放課後に意味もなくどこかに集まって、他愛もない話をしていたときのことを思い出していた。
後から思い返すと、何を話したかはあまり覚えてないけど、楽しかった放課後の空気。
話した内容は服装に関することとか勉強になる思い返せそうなことだったけど、雰囲気はそういう感じだった。
ナンパ活動は放課後の時間を思い出す。
若い時に経験することなんてほとんどが後から思い返すと無駄なことばかりなのだろう。
それでも、人生のいつくしみ方を知っているけちな大人にならないためには、素敵な無駄使いをどれだけしたかが重要だと思う。
放課後の時間はまさにそれにうってつけの時間なのだろう。
俺の場合は放課後に一度区切りをつけた方がいいような気もするけど。
素敵な時間を過ごせたと思った。贅沢な時間だったな。
その後、Lさんを改札まで見届けた。
もうすぐ帰ると思うと、目に映る何もかもが切なくて切なくてたまらなかった。
景観の良い駅、見慣れないバスターミナル、近い位置にある喫煙所、街特有の細長い女の子、お土産の広告、あまりに不親切な駅の地図。何もかもが。
バスに乗っている間はいろんなことを思い出して、一人しんみりとした心地になっていた。
濃縮されたある時間を振り向いてみることが、そのときとても切ない感じがするのが、旅なのだろう。
あとがき
この間、といっても数日前だけど、女の子と話した時にLさんの自然な親切を思い出した。
凄腕は遠征者に対してのもてなしも一流だ。
Lさん、雑遊びさん、貴虎、あたお、もちろんここに名前の挙がってない人もすごい人はたくさんいる。皆、心の偏差値が高い。
彼らと話すたびに、自分は"あっち側"には行けないんだなと思う。
俺は自分のことしか考えられない。
自分の感じることには敏感なだけ。
ナイーブとかデリケートとか神経質とか。そういう類だと思う。
決して"繊細"ではないんだろう。
向き合ったものとか、その数が違うんだから、比較することすら馬鹿馬鹿しいことではあるけれど。
文学的だと意図されたものが、決して文学にはなれないように俺は本物じゃないんだと思う。
話を元に戻す。
空条と女の子たちが俺の家に遊びに来た。
みんな寝静まった頃に眠れなかったので、ゴミとかを捨てて食器を洗った。
その時に、「しっかりしてるんだね。苦労するね」と女の子がぽつりと呟いた。
あぁ、気を遣わせちゃったんだなと思った。
複雑な感情が渦を巻いた。
恥しかった、自分が親切な人間と思われてしまうのが。
そんなんじゃない。
俺は傲慢で偽悪的な態度や発言が多いけど、悪意はないという真意を相手が汲み取ってくれるのが自分の理想だと思ってる。
自分の浅さが見抜かれていた。
どうでもいいことには気を遣うのに、大事なところでは気を遣えない自分の浅さが。
そんなことを考えた。
ナンパをなんでしてるんだろうということも悩んだ、というより今も悩んでいる。
最初の方は単純にセックスがしたいからという理由でやっていた。
だけど、最近は性欲が減退してきた。
もちろん酒の影響も大きいとは思うけれど、素面のときにセックスをしたい気持ちも薄れてきた。
求められてるときには応じないと相手にも失礼だとか、自分が相手を性欲のはけ口にしてきたのに自分はそれを拒むのは違うとか、
そういうことを考えると頭が痛くなる。
なんでナンパをしているんだろう、そういうふうに何度も自問自答をしていた。
新しい自分と向き合い続けていくのに、どうして男と女の関係は古びていってしまうんだろう。
所詮、人間は別々なんだろう。
どんなに愛し合って、心と体がくっついていても、体が離れれば他人同士に戻ってしまう。
一見通じ合ったように見える心だって、簡単に切り離されてしまうことだってある。
だけど、だから、女の子と愛し合うの、俺は好き。
そんなことめんどくさすぎてやめたいような気もするし、面白いから続けて行きたいような気もする。
だからナンパを続けてるのかもしれない。
結局自分のことすらよくわからない、これからわかっていくのかもしれない。